「ピンポーン!」
突然、チャイムを鳴らす音。宅配便でも届いたかと思えば、スーツ姿の若い男性、あるいは男女が2人……。
「この周辺を回っています。何でも買い取りますので、処分でお困りの物はありませんか?」
どうして、頼んでもいないのに我が家へ?
……気軽に招き入れるのは止めたほうが良いかもしれませんよ。
彼らは、近年大きな問題となっている「訪問買取」です。
多くは一見、信頼できそうなスーツ姿。2~3人で組んで訪れ、架空の名刺や偽名の明細を置いていきます。
あとで不審に思って電話をかけても、その番号は通じないことが多いようです。
最初は「靴や衣類、和服やバッグ」など、かさばって処分に困りそうなものから話を始めます。
「どんなものでもいい」「どんな状態でもいい」などと言うものの、実際には買い取ってくれません。
いくつか見せると「これは商品になりませんね」と言い出し、次に出る言葉は決まって……
「貴金属はありませんか?」
彼らの言う「靴や服といった身近なアイテム」は、訪問した先に貴金属を出させるための「入口」でしかないのです。
そうして出させた貴金属を、ろくに重さも測らず格安で買い取っていってしまいます。被害に遭った方のお話によると、一般的な買取店の1/10以下の価格になることも少なくないようです。重さでの買取になるはずの貴金属も「汚れているから安くなる」「切れているから1000円」などということも、平気で言ってきます。
しつこい訪問者も多く、早く帰ってほしくて、ついつい貴金属を出してしまう方も少なくないようです。
中には実在する店舗の名をかたり、信頼を得ようとするあくどい訪問者もいます。勝手に家に上がり、たんすや引き出しをあけて奪うように金品をせびるケースもあるそうです。
よく考えてみてください。
1件1件、移動して買取をするには、かなりの経費や人件費がかかります。
そのような買取方法で、高い買取額が実現できるでしょうか?
「それでも、たまたま売ってしまう方」を狙って、彼らは手当たり次第にインターフォンを鳴らすのです。
そのために、まずは事前に手に入れた名簿などから無作為に電話をかけ、どこかで訪問買取の確約を取ります。
訪れたその家での買取を済ませ、次は周辺のインターフォンを手当たり次第に鳴らします。そうして「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」やり方で安く貴金属を中心に買い取り、大幅な利益をあげて戻っていきます。
もしも回収された不用品があった場合、その中の高級品を除いてまとめてリサイクル店に売りさばかれたり、不法投棄などで処分。
そうして噂になる前に姿を消し、また次の街へ……のくりかえしです。
彼らのターゲットは、主に「お年寄り」。
中には「ノートパソコンで一生懸命調べてくれたり、本部に電話で聞いてくれたりして、いい値段で買い取ってくれた」という感想をお持ちになる方もいらっしゃるでしょう。
でもそれは、彼らの「ポーズ」に過ぎません。
そうした姿勢にほだされやすく、貴金属を持っているお年寄りの家を中心に狙います。
「東京で店を出すので、商材を集めている」
「わざわざ大阪から来た」
などの文句も、ほとんどは情を呼ぶための嘘です。
もしも近辺に、そのような被害に遭った方がいたら?
できることは「次に来ても、利用しないように伝え合うこと」ぐらいかもしれません。
値段によって処分を検討しているのであれば、あらかじめ買取店でグラム単価から見積もってもらっておくのもいいでしょう。その価格を訪問買取の言い値と比べれば、おおよその買取店よりはるかに下回るはずです。いくら金相場が変動制でも、急に数分の一になるほど極端に流動的ではありません。
この「強引な訪問買取」は社会問題となり、消費者庁も注意喚起しています。
あわせて「独立行政法人 国民生活センター」のページをご覧ください。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170907_1.html
何の前触れもなく、突然やってくる訪問買取は悪質である可能性があるということを認識しているだけでも自己防衛になります。
気軽に利用しないように心がけ、そのような人物が回っているという情報があれば、利用しないように情報共有して防止しましょう。