プロポーズに必須の、婚約指輪(エンゲージリング)。また永遠の愛を誓う、結婚指輪(マリッジリング)。
婚約指輪は古代ローマ時代から婚約の証として用いられ、中世以降は宝石を飾ることが主流に。15世紀ごろからはそれがダイヤモンドになり、19世紀末に定番化。日本では戦後になって婚約指輪が定着しました。
一方で結婚指輪は結婚の証であり象徴となり、異性が近づいてくる可能性を減らす効果も含みます。13世紀ごろのヨーロッパで一般化し、日本では明治時代後半に伝わり、キリスト教式の結婚式が増えるにつれて広まり、大正時代に定着しました。定着した時代に差があるので、ご年配の方には婚約指輪がなく、結婚指輪だけという方も多いようです。
どちらも人生で大きな側面に関わるものですが、事情により不要になる方や、結婚指輪を5年・10年単位などで定期的に買い替える方も少なくありません。
特に結婚指輪は結婚当時の幸せな気持を思い出させてくれるだけでなく、結婚後の生活を送る中で困難が訪れた際、助けになってくれる期待も込められています。だからこそ貴金属で作られているというお話もあります。
それでは、その買取や販売についてはどうなっているのでしょうか?
■婚約指輪・結婚指輪の買取(または質預かり)
どちらも純粋に「貴金属」として、重量での計算をしての買取になることが一般的です。というのも、これらの指輪には内部に彫りが入っているものがほとんど。結婚した日付やイニシャルなど、あくまで「その人のもの」として指輪は存在しています。
そのため買取後、それをそのまま販売しても買い手がつきません。イニシャル入りの財布は気にしないで使う方もいますが、指輪は前オーナーを象徴する刻印があり、込められた意味が重いので、需要がほとんどないのです。
よって買取後は、溶かして貴金属として再生します。そのためどうしても重さと金相場をかけ合わせた買取になってしまうのです。仮にデザインの凝った特注品でも、それをそのまま再販できる可能性は見込めません。デザイン料が高かったものも、買取の場合はほとんどすべてが「重さ」です。
中にはごく一部「彫りが入っていて再販できないから安くなる」などと言って査定額を落とす業者も存在するようですが、再販ではなく溶かして再利用するので、その理屈はおかしいことになります。そういうケースでは販路を追求してみましょう。
なお、指輪そのものが価値の高い品物として流通するティファニーやカルティエなど一部ハイブランドであれば、彫り部分を削っての再販なども視野に入りそうです。その場合は中古相場が純粋な重さ計算より高くなっていることが多いので、そこを基準にして加工賃やソーティング料などを引いて買取額を考えることになるでしょう。
以上の買取目安を基準に、質預かりも可能です。店舗によって金額が異なると思いますが、ほとんどのお店では婚約指輪も結婚指輪も買取・質預かりどちらの対象にもなります。
■婚約指輪・結婚指輪の販売
ここまでお読みいただけるとわかるとは思いますが、結婚指輪をお店に置いても探しに来る方はごくごくわずか。しかもサイズはおろか、イニシャルや日付の彫りが完全に一致することは、まずないでしょう。
そのため、ごくまれに中古品の結婚指輪を探しに来られる方がいらっしゃいますが、ほとんどの中古取扱店にはありません。売っているリングを購入し、あとで号数の調整や彫りといった加工を施すのであれば可能ですが、それもペアで見つかる可能性はきわめて低いでしょう。それであれば、男性が女性に贈る婚約指輪のほうが可能性はありそうです。
人により事情が異なるので、格安のものを探しているのか、デザインのいいものを探しているのかはわかりませんが「すぐに使える結婚指輪」を中古品で探せる可能性は、ほぼゼロに近いと思います。
買取もしている宝飾専門店であれば、自店で加工できるので多少は可能性があるかもしれません。しかし指輪の素材やデザインにも流行があるので、再販を望めるものはごくわずかでしょう。
■どちらも大切な「記念品」
婚約指輪・結婚指輪ともに、想いと意味が込められた大切なもの。
婚約指輪は若く裕福ではない中での努力の象徴として、結婚指輪は絶え間ない夫婦の愛の証として、ともに「その人一個人の」大切なものとして輝いています。
大半の人は「一生に一度」になるもの。それならせめて、購入する場合は中古ではなく新品を検討してみませんか?
あるいは売却をためらっている方も、思い切りが必要かもしれません。お客様の中には「これがあることで、ずっと縛られている気分になる」という理由で売却を決める方もいらっしゃいます。売ってしまうことで、指輪に込められた「意味の重さ」から解放されるようです。
売却や質入れにあたり「婚約指輪だから……」「結婚指輪を出すなんて……」などと言わず、ぜひとも拝見させてください。
込められた想いに値段をつけることはできませんが、ささやかながらお手伝いをいたします。