世界における質屋の歴史
皆さん「質屋」が日本独自のものだと思っていませんか?
質屋は現在、ヨーロッパからアジア、アメリカまで全世界の国々に存在します。日本の質屋と異なる部分も多いようですが、基本的な「貸付金を渡す代わりに、担保として品物を預かる」のは同じです。その質屋の歴史も、実はとても長いのです。西洋ではギリシア・ローマに始まり、東洋は中国を拠点に質屋の歴史が始まっています。
【西洋の質屋】
西洋では、なんと紀元前の古代ギリシアとローマ帝国に質屋が存在していたことが判明しています。
一般化していくきっかけは1070年頃。イングランド(現在のイギリス)を統治したウィリアム1世と共に質屋がイングランドに進出。その後、戦争前に王様が軍資金捻出のため質屋に宝石類を質入れしていたそうです。戦勝後、報酬をつけて返金されたと思われます。
十字軍も遠征のため自分たちの土地を修道院や教会に質入れしていました。この場合、利息はその土地でとれた収穫物の一定量だったそうです。
またイタリアでは利子の代わりに教会への寄付金を促す動きが起こり、ヨーロッパ全体にも浸透。質屋の組織化も進み、上位階級のみのものではなくなっていきます。
それ以外にも質屋は宗教との接点は多く、また王政によって制度も左右されましたが、上位階級には重要な金融機関として存在し続けました。だんだん一般階級にも普及していき、やがてはアメリカにも渡りました。
【東洋の質屋】
東洋、特に中国では皇帝や王の権力が絶対だったため、全権を掌握してあらゆる商売が制限されていました。
そのため質屋の起こりも遅く、紀元500年頃からようやく質屋のビジネスモデルが登場。東洋でも西洋と同じく宗教に密着しており、仏教の僧院に質屋が存在していたといわれます。
中国が次々と変わる政権によって国土を広げ、現在では他国となる国にまで進出してきます。同時にヨーロッパも統治国や領土が次々と変わり、中国とヨーロッパの間にあるインドや海を渡った東南アジア諸国、イギリスと中国に統治されてきた香港にも質屋が広がっていきます。
日本にも大々的に貨幣経済が導入された1200年前後、鎌倉時代に質屋の原型となる「戸倉」が誕生。戸倉は造り酒屋ですが、兼業として質預かり業をおこなっていたという文献があるそうです。
その後、江戸時代になって名称が「質屋」に改められ、大幅に増加。現代質屋のおおよその雛形ができあがります。当時から武士や庶民が刀や着物を質草にして利用するものとして定着し、その後近代になって質屋取締条例(1884年)・質屋取締法(1895年)・質屋営業法(1950年)の成立を経て、現在に至ります。
【質屋の守護神】
質屋の起源は西洋。その長い歴史の中に「質屋の守護聖人」も登場します。
「ミラのニコラオス」や「聖ニコラウス」と呼ばれるキリスト教の司教がそれで、起源270年~350年前後を生きた長寿の聖人。多くの無実の罪に苦しむ人を救ったとされています。
ニコラオスは貧しい娘たちに持参金をひそかに恵み、結婚できるようにしたという伝承があります。その行為によって質屋の守護聖人とされ、同時にプレゼントを配るサンタクロース伝承の発祥とも言われています。
また海運の守護聖人でもあり、子供の守護聖人でもあり……質屋にのみとどまらない「偉大なる聖人」ですね。
【伝統は宝】
このように、質屋は歴史と伝統あるもの。そのため現在営業している質屋の多くも長い営業実績があり、一般的な買取店やリサイクル店より信用度が高いとされています。
長い歴史があるからこそ、ノウハウやネットワークもあり、安心して預けることができる。または高く買い取ることができる。
今でも「質屋にお世話になるなんて、恥ずかしい」という方もいらっしゃいますが、一度訪れてみてください。きっと安心できると思いますよ。