カメオは値段がつくの?
バロック調の貴婦人や薔薇などをかたどり、貴金属の枠をつけてアクセサリーにされる「カメオ」。
日本でも経済的に豊かだった時代に流行し、近年になって買取に持ち込まれることが多くなっています。
このカメオには、どんな価値があるのでしょうか?
■「カメオ」とは?
まず「カメオ」とは、貝殻や石に彫刻を浮き彫りしたものです。沈め彫りしたものは「インタリオ」と呼びますが、まとめて「カメオ」と呼ばれることが多いです。古代ギリシャで発達した技法と言われ、当時は主に指輪につけられ、印章代わりとして捺印するために使用されていたとされます。
カメオには主に2種類あり、貝殻に彫刻されたものを「シェルカメオ」、瑪瑙(メノウ)などの石に彫刻されたものを「ストーンカメオ」と呼びます、王侯貴族や貴婦人、花や風景などが刻印されることが多く、一般的に金やプラチナなどの貴金属の枠を付けて商品化しています。アクセサリーとしての主張が強いアイテムで、よく見かけるのは大型カメオに枠をつけたブローチやペンダントヘッド、イヤリングといったもの。小型カメオをリングやピアスにしているものもあります。小型でも色石を遥かに凌ぐ大きさがあるので、パッと見ただけで華やか。気品のある空気感で、現代では装着するシーンが限定されますが、ドレスが似合う会合などに着用されます。現在は技術の発展により貴金属リサイクルが可能なため、家にあった古いカメオをリフレッシュし、新しいアクセサリーとして仕上げることも可能になりました。
■技術革新で身近な存在に
かつては1点1点が手彫りだったため高級で、羨望の的だったカメオ。しかし1970年代後半に開発されたコンピュータ彫刻機により、彫刻家がデザインして彫った原型をベースにすれば量産できるようになりました。それでも手作業が多く手間はかかり、大量ではなく少量生産ですが、1点ものではなくなったことでだいぶ手頃になり、一気に流行。実は、買取に持ち込まれるカメオのほとんどはこの時期以降のもの。それより前の手彫りカメオには希少性からアイテムとして単体で作家や年代により価格がつくこともありますが、量産できるようになったカメオにはそれが見込めません。現在もこの技術で新しいカメオが生産されたり、ブランド品では陶磁器で有名なロイヤルコペンハーゲンが「ジャスパー」シリーズの一環として、陶器カメオのリングを販売していたりします。
■買取の基本は「枠の重さ」
それでは、カメオ単体での買取価格はどのぐらいでしょうか?
残念ながら、カメオ単体に値段がつくものは、非常に稀です。どの買取店でも多くは「カメオを外した外枠の重さを想定して」重量計算し、貴金属相場と掛け合わせた「地金価格」になってしまいます。
前述のように、コンピュータ制御で量産できるようになったカメオは、それ単体での値段がつくことはほとんどないのです。あるとすればブランドやメーカーでの「アイテム」として、単品で価値のあるものぐらい。一般のカメオに値段がつくことはほとんどありません。
中にはカメオ自体に高額が付くように見せている広告や買取業者も存在しますが……ちょっと待って!
もしも店舗の査定で「カメオに値段をつけました」と言われたら、それがいくらなのかを聞きましょう。そのうえで貴金属のグラム単価を聞き、外枠部分が何グラムでの計算になっているのか、逆算してみましょう。
もしもカメオに数千円の値段がついていたとしたら、貴金属部分のグラム単価は安くなっているはずです。あるいは貴金属重量とカメオ単体の計算に、違和感が出てくると思います。
または買取価格を公表している広告があった場合は、本日の金相場や店舗が公表している貴金属買取相場で割り算してみましょう。残念ながら、掲載された写真の貴金属の重さぐらいの数字になってしまうことが多い傾向です。
さらに残念なことに、中には具体的な買取価格を明示せず、画像と文章だけでカメオ単体にも効果な買取額がつくと思わせて、お店に持ち込ませるキッカケにする買取業者もあるようです。
もしもカメオ自体に価値を求めているのであれば、査定額や説明に少しでも違和感があれば警戒し、少しでも話に違和感があれば納得がいくまで説明を求めたほうがいいかもしれません。
■値段がつくカメオは?
それでも実際に、単体で値段がつくカメオは少なからず実在します。
主に「有名作家のデザインや原型」「コンピュータ彫刻より前の年代に流通した手彫り1点物」「希少価値のある当時物」など。モノと状態によって価格はまったく異なりますが、美術品に近いアイテムであるため、一般の買取店では中古相場観をつかむのが非常に難しいと思います。
これらに必須なのは、そのカメオに作家的価値・年代的価値があることが明確になる「証明書」。証明があることでアイテムとしての価値を発揮できるため、それがないだけでグラム計算になってしまう可能性もあります。
またはアイテムとして価値がある有名ブランド品であれば、貴金属だけではなくカメオ入りアイテムとしての中古相場が存在します。そのため、そちらの相場を基準に値段がつきます。
一般の宝飾店で売られていたようなものは量産カメオなので、残念ながらカメオそのものには価値がないと考えたほうがいいかもしれません。
■気になったら宝飾品専門店に持ち込もう
多くはありませんが、そのまま販売するアイテムとして流通させるため、カメオ買取に強い宝飾品専門店もあります。
カメオ単体の価格が気になったら、宝飾で有名な御徒町などを訪れて業者を探すのも手段のひとつです。そうした信頼の置けるお店を訪ねてみれば、専門家のしっかりした話も聞けるでしょう。信頼の置ける業者は価値のないカメオに「値段をつけた」などと話さないはずです。
ただし前述のように、カメオを囲む地金部分を目的とした買取業者も少なくないので、参考になる具体的な数字が掲載されている広告や、信憑性のある話が聞ける店舗を選びましょう。そのためにもまず、サンプルになっている買取額と金相場・重量の計算ができるようになれば、優良な業者選びにつながるでしょう。
とても地道な手段ですが、最終的には、納得がいくまであきらめないことが最大の満足を呼ぶと思います。
時代により、価値は変わるもの。
かつてはカメオ単体の価値があり、現在でも新品販売では価値が存在します。
しかし買取では、カメオはパールと似たような扱いになってしまいました。その事実を知っているだけでも、買取に出すか保存するかの選択肢も選べると思いますよ。