ある程度買取品目を限定する質屋さんはもとより、規模の大きなリサイクル店でも「買い取れないもの」が多くあります。
衣料品や携行品、家電品などは「状態がよくない」「古い」「未使用しか買い取れない」といった理由があると思いますが、そうした理由ではなく、中古マーケット独自の理由や流通、法令などにより買い取れないものも多いです。「使っていないのに、どうして?」
【縁起物】
ひな人形や五月人形、しめ縄に角松、こいのぼり……日本ではイベントの時だけに使用されて、それ以外の時期は眠ったままのものが多くありますよね。こうした「縁起物」は、実は多くの店ではほとんど買い取ることができません。簡潔に言えば「中古としての需要がない」からです。
縁起物全般は、他者の使用品を使いまわすこと自体が「縁起が悪い」とされ、まず廉価でも中古品を欲しがる人がほとんどいません。大きなものも多く、一軒家ではなく集合住宅住まいがあたりまえになった現代では「その時のためだけ保管する」居住スペースの余裕もありません。
特に人形は「魂が宿る」などと言われる風習があり、中古品は極端に敬遠されます。やはりお爺ちゃんお婆ちゃんがお孫さんに買ってあげるなど、風習として考えたほうがよさそうですね。
なお、結婚式用のウェディングドレスや晴れ着もこれにあたり、買取を制限するお店が多いです。
【たばこ】 最近はお酒の買取を始めたり、免許を取得して販売するお店も増えてきました。そうなると嗜好品として「たばこ類」が連想されることが多いですが、ほとんどの店では取り扱えません。たばこの販売には法務大臣の許可が必要ですが、専門の販売店でない限りそれを取得することが難しく、取り扱っている買取店はほとんどありません。多くのオークションサイトやフリマアプリでも、出品禁止商品になっています。もし仮に取り扱えたとしても賞味期限や個々人の好みもあり、在庫処分廃棄やロスが予想されます。さらに年齢制限や風紀上の問題なども絡んでしまうのでトラブルが想定され、最初から取り扱わないお店がほとんどです。
【名前入りなどの引き出物】
食器類は未使用であれば買い取る店も多いと思います。しかしそれが、結婚式などでいただいた「個人の名前や写真が入ったもの」「個人によるデザイン」であると、その時点で買取ができません。
まず前提として、その食器は「そこに記された人物に関係がある人にだけ」配られています。そのため、一般の人にとっては無関係であり、不要とされ、需要がないのです。また個人情報保護法にも絡んでしまうので、細かく言えば法律にも抵触しかねません。
(※「ハイブランド食器なら可」としているお店もあります)
個人から個人への贈り物なので、使ってあげられると一番いいのですが……。
【加工された動物】
象牙・剥製・虎の敷き皮など……一時期、生き物を飾ることが富裕層の中で流行っていました。しかし時代とともに居住スペースも狭くなり、買取をご相談される方も多くいらっしゃいます。
しかしその多くは売買のための乱獲が問題視され、現在、1970年代に施行されたワシントン条約に反しています。そのため買い取ることも販売することもできなくなっています。
ワシントン条約制定後、象牙などは販売時に証明書が添付されるようになりました。それらがあれば売買は可能ですが、証明書がなく売買をすると違法行為として摘発されます。
条約の対象となっていない亀の剥製などは現在でも流通していますが、人気はいまいち。ブームが去ってしまったこと、残酷に想う感情や声、集合住宅が主となる時代の流れなどが関与しているのでしょう。
これはオーストリッチやクロコダイルの人気が落ちていることも、同様に考えられます。
【刀剣類】
昔からの大きな家や蔵のある家には、刀剣が眠っていることがあります。多くは模造刀なので危険性は真剣より低いですが、これにも証明による規制があります。売買には真剣・模造刀関係なく、教育委員会の証書である「銃砲刀剣類登録証」が必要です。それがないと売買できないだけでなく、所有しているだけでも違反行為になってしまいます。教育委員会に連絡して登録証を発行してもらうことはできますが、買取店では専門知識が必要な「美術品」に値するため、取り扱わないか限定する店舗がほとんどだと思われます。
【骨董品・美術品】
壺や掛け軸、絵画など……ついつい「ひょっとしてこれ、価値があるんじゃないの?」と思ってしまう骨董品。一般のリサイクル店でも、店長の知識やスキル次第の買取店でも、さらには古くからある質屋さんでも、それらのほとんどは限られたもののみ対応するか、「鑑定不可」を理由に断るケースが多いです。真贋するためにはかなりの専門的知識が必要で、また専門店ではないので、お店に置いても買いにくるお客さんはいない。扱いも繊細で難しく、高額品ばかりなので各種リスクが高い。買取店は「鑑定機関」ではないので、専門の骨董店などをお探しになることをおすすめします。インテリアとしての査定になることもしばしばですから、期待に応えることができないのです。
【サンプル品】
化粧品や香水など、サンプル品をもらう方も少なくないと思います。しかしそれらは基本的にメーカーの所有物のまま社員に配布されるので、もらった社員や関係者が使う以外の譲渡は原則的に禁止されています。そのため売買も禁止され、買取や販売ができません。また香水などに多いですが、日本語表記のシールが貼られていない輸入品は「薬事法」が関わって取扱が厳しくなります。
【大きすぎるもの】
リサイクル店は規模が大きい店も多いですが、それでも販売スペースには限りがあります。さらに、持ち帰りや配送の関係もあり、大きさによる制限が設けられる品目も少なくありません。
家具では応接セットやシステムキッチン、婚礼家具やベッドなど。ピアノやオルガンも家具と判断され、買取に制限があります。
家電ではエアコンやドラム式洗濯機など。持ち運びが困難だったり、設置が別途必要なものは避けられがちです。なお、家電は製造年によってはキレイでも販売不可になってしまうケースもあるため、持ち込んでしまう前にまずは型番などで店舗に問い合わせてみましょう。
【防犯登録を解除していない自転車】 現在では、自転車は購入時の防犯登録が義務づけられています。そのためお店から売られた全部の自転車は、すべて「防犯登録されている前提」で見られます。それをそのままリサイクル店に持ち込んでも、買い取ることはできません。なぜなら防犯登録は登録者本人にしか解除できないため、解除していない状態での他者への譲渡や売買は「自転車法」に抵触してしまうのです。さらには、もしも防犯登録を解除せず買取店に売ってしまった場合、新しく販売された先で盗難被害があると、登録されている人に連絡されてしまいます。つまり、すでに手放しているのに売却した人に連絡がきてしまい、トラブルが二重三重になってしまいます。買取を依頼する場合、まずは最寄りの警察署や自転車防犯協会に防犯登録の解除をお願いします。解除した証書の控えがもらえるので、それを自転車と一緒にリサイクル店へ持っていけば買取が可能です。(※状態・年式などから、店舗によっては買い取れない場合や鉄材としての判断になる場合もあります)
【支払いが終わっていない携帯端末】
最近は「1年払い」「2年払い」が当然になってきている携帯電話(スマートフォン)。それらの状態を識別するために「IMEI」という番号があり、各キャリアのサイトで確認すると、支払状況が「○」「△」「×」「-」の4種類で判定されます。それぞれ「○:支払が完了している」「△:支払い途中」「×:通信不可」「-:認識不可(キャリア違い、修理品など)」を意味し、そのうち多くの店舗で買取対象になるのは「○のみ」です。「×」は操作ができても通信ができない状態なので、取扱の対象外やジャンク品になることがほとんどです。問題は「△」判定。もし月々のプランに本体代を入れていて「△」判定であっても、本人の申請で支払いプランを変更することができてしまう。さらには遠隔ロックを施すこともできてしまうので、実質的に「使用不可能になる可能性がある、×判定と同じ状態」として考えなければいけないのです。(※店舗やキャリアによっては「△」でも買い取るお店もあります)
なお、キャリアによる保証サービスも本体込みプランの一部として扱われてしまい、一括で支払っていても「△」判定になってしまうケースもあります。また、一括で買っていたつもりが契約内容がわかりにくく、実は月々支払いのプランだったという事案も多々あります。
そういった状況をご説明いただいても、ご本人にしかそれはわからず、お店側には判断できません。そのためどうしても「○判定かどうか」という判断になってしまうのです。
また厳密に言えば、支払いが完了していない「△」の状態では所有権が完全にはユーザーに移っていないため、そういう意味でも買取は敬遠されます。
【絶対数が多いホビー類】
ホビーを取り扱っているリサイクル店は多いですが、破損品や部品不足、組み立て済プラモデルなどが取扱不可能になるなど、かなりの制限があります。中でもモノ自体が制限されてしまうのは、絶対数の多いもの。「プライズ」と呼ばれるクレーンゲームなどの景品類や、ファストフード店のおもちゃセットに付属するおもちゃなどがそうです。
これらは容易に手に入り、買うものでもないため、商品としての価値をつけられません。品物の貴重度にもよりますが、厳密に言えば「無料のおまけ」「100円で手に入る可能性があるもの」として見なくてはならないのです。
いかがでしょうか?
ほかにも「意外と買い取れないもの」はありますが、ここに挙げたものだけでも「売れそうなのになぁ……」と思いませんか?
なるべくは買取店をうまく利用したいものですが……お金を払って不要家電を処分してもらう「家電リサイクル法」が実施されている現代。もはやどんなものでも「廃棄処分にも等価が必要」と考える必要性があるかもしれませんね。