こんなチラシに気をつけて
「高価買取」の文字が大きく踊る買取店のチラシ。
フルカラーで高級品の写真が並び、目立つので「売っちゃおうかな」と思わせますが……ちょっと待って!一般の方にとっては違和感がなくても、買取を生業としている店舗にとっては疑問に思う部分が多く見当たります。少し考えればわかることも多いのですが、視覚的インパクトでイメージとして見てしまい、細部への意識が流されてしまいます。今回は、チラシのどんな部分に気をつけて見たほうがいいかを買取店の視線からお伝えします。
1. 金相場上昇中のグラフ
多くの買取チラシでは、近年の金相場上昇をアピールしている枠を見ます。
数十年前と比較していることも多いですが、そもそも金がグラム1,000円程度だった時代と比較すると急激な上昇グラフになるのは当然。金相場はその日によってレートが変わりますが、まるで常に上がりっぱなしで「売るなら今」のイメージを煽っているように感じます。
2. 自店の買取相場ではなく、業者金相場を掲載している
買取店の多くは貴金属を買い取ったあと、業者取引をしている貴金属専門業者に売却します。そのため新聞などに掲載される大手貴金属業者の価格と異なるはずなのですが、貴金属業者と同じ数字が掲載されているチラシが多いように感じます。それによって高く買い取るイメージを誘っているように見えてしまいます。
18金のグラム単価が明記してあったので、持ち込むと「それは業者の価格で、うちの店の価格ではない」と言われ「じゃあどうして掲載しているのか」と押し問答になることも……。
3. ダイヤモンドのグレードが最上級での計算
「3ct(大きさ/重さ)」「VVS1(透明度)」「D(カラー)」「EX(カット)」……ダイヤの一覧表に表記された、グレードについての文字。どの項目も「最上級」の値で、1ct以上大粒の天然ダイヤにこれらの条件が揃うことは、ほとんどありません。ただし計算上では想定されるので、最上級の数字を打ち出すことで、ダイヤそのものの買取が高いイメージにつなげているように感じます。
4. 具体的な買取額でもグラムが書いていない
金杯や喜平のネックレス、リングなどがゴチャッと積まれた写真に踊る、買取実績の金額。
一見、高そうに見えますが、何グラムあるのかわかりません。そのため1グラムあたりの単価は不明。これはやはり高額なイメージをつけるためだと思いますが、さらに貴金属がグラム計算になることを知らない方にとっては、1点1点を評価した合計なのかもしれないと妄想させがち。
本当に買取額に自信があるなら、グラム単価を明記しないものでしょうか。
5. 地金買取実績の末尾がキレイ
そうした画像の末尾の数字が「~,000円」とキレイになっているのは、なぜでしょうか?
貴金属は重さでの計算が基本なので、評価できる色石やダイヤでもついていない限り、末尾の数字はおよそ1の位まで算出され、重さでの計算なので切り上げることもできません。そのため本当にその品物の価格なのか疑わしく、理解しやすいイメージ化もあってキレイにしているように感じます。同時に、ここにも貴金属がグラム買取であることを知らない層へのアピールを感じます。
6. 逆に価格が書いていない
商品の名前と写真だけの列記。純粋に「買取対象品です」という意味もあると思いますが、並んでいるのは高級メーカーやブランドの品物ばかり。
そうした商品の具体的な価格を正直に載せると、他店が参考にして「その少し上」で買い取ってしまいます。あるいは買取額が安いイメージにもつながりかねません。だから伏せているように感じてしまいます。
7. あまりに高い買取額
逆に、個別商品に自信を持った買取価格を明示してあるチラシも多いです。
しかし疑わしいのは、その数字がどこの買取業者よりも高く、日本でその価格で買い取ってくれる業者がいるのか? という数字になっていることも。実際に店舗に持っていくと「未使用品の価格です」「今は値段が下がっています」「あくまで当時の参考価格ですから」などと言われ、査定に出すとチラシと大きな開きがある結果に……。
高い数字を掲載していればお客さんも来てくれるし、ライバル業者も買取額の参考にしない。実際に買取できるはずがないほど高額な数字には、そんな思惑が見えてしまいます。
8. 「○○円」買取保証
「ロレックスなら状態問わず10万円買取保証」などの文字も、増えてきました。
「ガラス割れや動作しないものでも10万円買取は保証する」ということですが、実際にはその状態でも、それ以上の価格で取引されているものが多いです。高く見せて実は安い、という可能性があります。
さらにロレックスでもアンティーク品の女性モデルなどには、数万円になってしまうものもあります。それでも10万円買取を保証してくれるのかは疑問です。
9 . 「色石OK」「メッキもOK」の文字
買取の間口が広く、どんな色石やメッキ製品でも値段がつくイメージですが、これは「金なのかメッキなのかわからない方に、店へ持ってきてもらう」ためのキャッチコピーです。実際にメッキ品だけを持っていくと「取り扱いがある、という意味であってすべて買取OKとは書いていない」と断られます。
これは通用銭など価値のない古銭も同じことで、持っているものに価値があるかも? と思わせるイメージ戦略でしょう。
10. クーポンが付いている
「このチラシを持参すると買取1,000円アップ!」「5万円以上の買取で20%アップ!」……といったクーポン券が、チラシについていませんか?
考えてみてください。買取額に自信があるなら、最初から最大の価格で勝負するはず。それを「アップできる余裕がある」ということは「もともとの利益幅が大きい」ということです。よくないケースでは、アップしても大丈夫なように、最初の査定額を落とされることもあります。
他にも期間限定キャンペーンでの買取価格アップや、紹介での金額アップなども同様に見えてしまいますね。
11. 「地域1番」の文字
残念ですが、地域で一番のお店は個々のお客さんが決めること。それを宣言するのは「地域で一番高いイメージ」を付随させようとしているように見えてなりません。
地域で一番を名乗っているのであれば、そのお店から見積もりを始めて他にも数店舗を回って「本当に地域で一番高い店舗」への売却をおすすめします。
■そもそも多額の広告費がかかっている
チラシに限らず、広告・宣伝にはお金がかかるもの。リサイクルショップなどの大規模チェーン店は本部で広告費を割ける余裕があるかもしれませんが、一般的な買取店では、広告費を捻出するため買取額に反映せざるを得ません。
つまり、フルカラーで見開きの大きなチラシをたくさん刷っているのは、買取額が高くない可能性が見えてしまうのです。一店舗でチラシを刷るのであれば、可能な限り広告費を削減するため、見開きではなく1枚にしたり、カラー発色や紙質を抑えたり、織り込む回数を減らしたりという努力をするはずです。
定期的に目立つチラシが入ってくる……という時点で、インパクトだけではなく「あの買取店だな」という刷り込みを狙っている可能性もあります。逆にインターバルをあけてチラシが入る場合は、お店があることを思い出してもらう効果を狙っているとも考えられます。
■長く営業している質屋さんは安心です
昔から営業している質屋は、本当に地域密着。質屋業界や業者のつながり、市場での相場など安心できる要素がたくさんあります。
「質屋はお金を借りて預けるところ」というイメージがある方もいますが、多くの質屋は買取もおこなっています。
特に貴金属やブランド品は、一般的な買取店より高く買い取れる可能性があります。昔ながらの質屋はチラシを打つことは少ないですが、それは地域に深く認知されていて、長年のノウハウで買取価格に自信があり、本当にお客さんに還元しているからなのです。
ぜひ質屋で、買取の査定をしてみませんか?