通販でのダイヤ購入について

昔からあるTVショッピングだけでなく、インターネットでも気軽に通信販売(通販)ができるようになった現代。
以前から「届いた現物に納得ができない」というトラブルが多く、「クーリング・オフ」が適応されないため、トラブルになる件が多くなっています。納得がいかず返品しようとも「業者に断られ、泣き寝入りした」といったお話も耳にします。
そこへ近年、「1カラット級のダイヤが、数万円~10万円といった格安価格で手に入る」通販が急増。新しいトラブルになってきています。

「番組で魅力的に紹介していたのに、実際に届いたら真っ黄色で黒い内包物がたくさんあるものだった」
というお話をよく聞きますし、お持ち込みも増えています。



なぜ、1カラット(1ct)ものダイヤが、格安で買えてしまうのでしょうか?
答えは簡単。「グレードがかなり低いダイヤを使っているから」です。

通販では、基本的に「良い部分」しか言及しません。「悪い部分」はなるべく伏せたまま、まるで「魅力的な部分しかない商品」であるようにアピールすることが常です。
最もわかりやすいのが、TVショッピング。芸能人やタレント、または一般の方を使って、商品をほめたたえるやりとりをして購入につなげていますよね。
もちろん魅力ある商品も多いですが、宝石、特にダイヤモンドはおすすめできません。
なぜなら「グレードが低いものを、とても良いものであるようにアピールし、上級の品物が格安で手に入る錯覚に陥らせる」からです。


ここで、ダイヤのTVショッピングでのアピール方法と、「その裏にある部分」をお伝えします。

・基本的に「1ct」を強調
 → テレビで嘘はつけないため、大粒であることを最大級にアピール

・「大きいと輝きが違う」などと発言
 → グレードはきわめて低いが、透明度や内包物などの具体的なことについては言及しない

・カットについて「ラウンドブリリアントカット」を強調
 → そもそも「ダイヤの基本の形をしている」と言っているだけで、具体的なカッティングのグレードなどは言及しない

・最後に「鑑定書付き」でまとめる
 → 視聴者を安心させるための手段で、実際に付属する多くはグレード表記もない「鑑別書」「品質保証書」

どうでしょうか?
TVショッピングなので、決して嘘は言っていません。しかし「その裏にある部分」については、商品の魅力を落としてしまう可能性が高いため、まったく言及していないのです。
ハイビジョン放送の現在では、我々のように貴金属や宝石について日々研鑽している者が見れば、モニター越しにも「黄色い」「黒い内包物が見える」「ルーペで拡大して見たらもっと良くないに違いない」といったマイナス要素が見えてしまい、自然と耳への情報をシャットアウトします。
しかし一般の方は「1ctダイヤ」というフレーズを耳にしただけで「良いものに違いない」と思ってしまうことがあります。そのためモニターでアピールされている「良い部分だけ」をどんどん耳が吸収し、購買欲を増加させてしまうのです。
そうして届いた現物を見ると、黄色くて黒い内包物が多いダイヤ。しかし強調していた「1ct」「ラウンドブリリアントカット」などは間違いではないのです。
大きいダイヤであれば何でもいい方なら納得できるでしょうが、そうでない方にとっては「じっと見れば、誰が見てもわかるグレードの低いダイヤ」であるケースがほとんどです。
そのため納得がいかず、クーリング・オフを要求しても「間違ったことは言っていない」と断られるケースがかなり多いようです。


ここで、クーリング・オフについて少し触れましょう。
8日以内であれば契約を解除できるクーリング・オフは、基本的に「訪問販売や電話勧誘などの、一方的なセールス契約を結んでしまった場合」に適応されます。そのため「自分から購入を選んだ通信販売」の多くは、適応外となってしまいます。
ただし「特定商取引法」によると、「販売業者が広告において返品の可否・条件(返品特約)を表示する義務」があります。つまりTVショッピングで「返品可能かどうか(その期間や条件)」について触れていない場合は、これに抵触することになって契約の解除が可能になります。残念ながら、返品について言及されている場合はこちらが適応できません。また、通信販売は基本的にクーリング・オフの適応外のため、業者側に強く拒否されてしまうケースが多いようです。
それでも「誇大広告」「商品の瑕疵を隠して販売している」といった可能性はあるため、長期的にはなってしまうものの、弁護士に相談することは可能です。しかしながら「そこまでするなら、このぐらいの額……」と泣き寝入りしてしまう方が多いのが実情です。

そのため「魅力度に対して不思議に思うほど安い商品には、必ず『言及されていない側面』がある」ということを、しっかり憶えていなくてはいけません。
こうしたアピールは、通販ではシルバーのアクセサリーや真珠ネックレス、色を染めた珊瑚アクセサリーなどにも用いられます。実際には、銀は地金としてはグラム単価が数十円であり、パールや塗ったサンゴは中古価値がつけにくい側面が強いため、買取などを相談しても二束三文になってしまうことが多いのです。
放たれる魅力を吸収するだけではなく「安い代わりに、何かがある」と用心するに越したことはないでしょう。

こうした通販トラブルは、TVショッピングが多いように感じます。
なぜならインターネットをする人はまだまだ若い層が多く、調べればすぐに情報を得られるため、絶対数は少ないのです。むしろ好んでコピー商品を格安で手に入れる若い層が多くなっていることこそ、ネット通販は問題視されています。
テレビ通販は年配の視聴者が好むため、知識・情報を獲得する前に購入に踏み切ってしまうケースが多いようです。違法になる側面がある訪問販売よりも、自ら購入して返品できない通販番組の方が、合法的に販売しやすいのでしょう。

そのため、商品に強い魅力を感じたら「まずは、ひと呼吸置いて」値段が適正かどうか考える時間が必要です。
息巻くスピードで紹介し、さらには「限定○○点」「人気のため、電話が繋がりにくくなっております」などのコピーで煽って販売するため、どうしてもその勢いに乗ってしまいそうになりますが、それも企画側の作戦です。
まずは立ち止まること。電話を持つ手を止めること。
そして「商品説明すべてに納得できたか」「疑問点は本当にないか」「本当に欲しい商品なのか」考えること。



通販はクーリング・オフが適応にならないため、自衛意識を持つことが必要です。
もし身近にTV通販番組を閲覧することが好きな方がいたら、それとなくお話できるといいですね。