衣料品(アパレル)の買取について

厳しいアパレル業界の現状

昨今、衣料品は販売も買取もどんどん厳しくなっています。
有名な海外大手メーカーの破産が続き、国内メーカーも減少の一途。ショッピングモールも次々とお店が変わる。ブランド服のアウトレット品も人気を博し、高い服はますます売れなくなる。そうして、いわゆる「ファストファッション」で身を包むことが、あたりまえになりつつあります。もはや質のいいシャツが500円や1,000円で買える時代。モールに入っているようなメーカーの元気が、だんだんなくなっていくのも当然かもしれません。

ファストファッションの流行・定着
スタートした頃のファストファッションは「安かろう、悪かろう」でした。縫製があまりにも甘かったり、無難なデザインばかりで買うことをためらう人も多かったと思います。しかし技術の向上とコストダウンが続けられ、現在は質・デザイン性ともに格段の向上を見せています。もはやメーカー品と比肩するほどになりました。その売れゆきに危機感を覚えた、モールに入るようなメーカーは次々とセールを展開。売れゆきを気にしてなのか、モール店舗は全体的にどの店でも流行のデザインのラインナップが増えている傾向です。そのため同じようなデザインでも「このブランドが好き」というお客さんがいて成り立っている印象もあります。さらに、そうしたアパレル・ブランドが好きなお客さんはアウトレットも併用。ますます「服は安くないと売れない」という展開になってしまいます。そうなると「メーカーはどこでもいい」というお客さんは、「これで充分」とばかり、どんどんファストファッションに流れてしまうのです。流行している形やカラーで、差をあまり感じられないなら、安い方を選んでしまうのはお客側心理として当然のこと。「いいものが安い」現在の、皮肉な構図になってしまいました。そうして、昔のように「いいものを長く使う」よりも「流行のものを、短期間のスパンで使い捨てていく」ことが一般化しつつあります。

厳しい買取査定
そのような背景があるため、衣料品の買取も非常に厳しくなっています。
リサイクル店(リユース店)などはメイン商材として買い取りますが、その多くが廃棄処分や、海外(主に東南アジア)への放出。ただでさえ流行サイクルが早い商品なので、1年が経過したらまず売れない。特にレディース服は、そのシーズンに売り切らないと在庫を抱えるだけになってしまう。よって購入時は5,000円ぐらいしたシャツやスカートも、買取では数百円、シーズンを外せば値段がつかないということもザラです。仕入れを安くして販売額を安くしないと、リサイクル店は商品が売れず、回転しません。アウトレットと同じで、多くのお客さんが「高い中古より、安い新品を買ったほうがいい」と思って離れてしまうのです。そのため買取額も、リサイクル店が流行した頃に比べて、近年は抑えがちになっている印象です。

「当時の購入額」は基準にならない
買取時、「当時の購入額」を基準にして、査定額に納得できるかどうか判断する方も多いと思います。衣料品に関わらず、どの商品でもそうですが、中古品買取には当時の購入額はあまり基準になりません。ものによって中古状態の程度も異なりますし、何より衣料品は「流行」がすべて。まず現在でも着用することがためらわれる昔のデザインであれば、衣料品はすべて査定評価から弾かれます。リングやネックレスといった貴金属アクセサリーは、デザインが古くなっても「貴金属の価値」があるので、重さ計算で買取ができます。しかし服は「衣料品素材」である以上、そういったこともできないのです。

衣料品全体の質が向上
「当時、とてもいいものだった」カシミアのセーターなどは、現在ファストファッションで3,000円~5,000円程度で買える時代です。しかも、当時より上質になって。「当時、とても高かった」革ジャンなども、数十年前のデザインでは、現在着る方があまりいないため厳しい現状。レザーも技術・供給が格段に向上し、ファッションとしてデザインもスマートなものに変わっています。また一般層には、軽くてあたたかいダウンジャケットやお手頃なフェイクレザーにその座を奪われています。「仕立てるのに高かったスーツ」は、その方の体形にフィットするように作られているため、「次のお客様」が限られます。幅広のダブルなど、現行ではないデザインはすべて評価されません。さらに現在では数千円でスーツが買えたり、オーダー品でも数万円で作ることができたりと、かなり安くなってきています。「仕立てるのに100万円もした」和服も、その人の丈や体格に合わせているため需要が限られます。さらには、和服を着るシーンが激減しているため、需要もきわめて少ない。そのためレンタルも浸透しています。また新品価格には職人さんの技術料が含まれている割合が高いため、商品自体の評価はさらに厳しくなります。ほぼ「正絹素材としての評価」になることも多いです。すべては「次に買ってくれる方が見込めない」ため、査定から弾かれてしまうのです。お客さんにとっては「お店に売って終わり」ですが、買取店にとっては「お客さんから買い取ったものを、次に必要とする方に売って終わり」ですから、お片付けをしたいお客様のお手伝いが、赤字見込みではしたくともできないのです。

質屋での衣料品の扱いは?
それでは、質屋はどうでしょうか?
質屋では、衣料品は買取も質預りもしないお店が多いのが実情です。
というのも、質屋はブランド品などを中心に扱うので、もともと衣料品は「ハイブランド品」以外は扱わないお店が多いです。常連さんから特別に買い取ることはありますが、リサイクル店のように大々的に買取をしているお店はほとんどないと思います。質預りについては、前述のように「預かっているうちに、商品価値がなくなってしまう可能性が高い」ため、ほとんど対象外になります。特殊な事情や常連のお客様のお願いで特別に預かるケースはなきにしもあらずですが、基本的に、価値が下がるのが遅いハイブランド品・高額品以外は対象外。昔は質草の常連だった和服さえも、近年は全体の需要が激減し、同時に中古販売する業者さんが減っているので、査定額が厳しい状態。扱いをやめるお店も増えてきています。質屋にとっては「もし質流れ品になったら、販売しなくてはいけないことを想定して」価格を査定しますから、販売見込みがない時点で質預りは厳しいのです。

決断はお早めに
流行やムーヴメントは、衣料品につきもの。
バッグでもそうですが、衣料品の流行は格段に買取店の査定ポイントになります。だからもし、不要に感じた衣料品があれば、秘訣は「早め処分」。
服は少し寝かせただけでも評価ゼロ、あるいは虫に食われて買取不可、なんてことにもなりかねません。一度は気に入って買った服ですから、手放す瞬間まで大切にしてあげたいものです。

ひと昔前までは、メーカーやアパレル・ブランドによってデザインや質、好みが多岐に分かれていました。似ているデザインばかりになってしまい、ファストファッションが重宝される現在。個性的なアパレル・メーカーには、また元気になってほしいですね。