「質屋は不況だと、儲かるでしょ?」
そんなふうに聞いてくるお客様が、意外といらっしゃいます。不況で生活資金が不足し、質屋にお金を借りにくるというイメージのようです。

特に2020年から2021年現在、世界はずっと新型コロナウイルスの脅威と戦っています。感染してもしなくても休職や退職に追い込まれる方も増え、自営業や飲食は自粛で営業苦。資金力のあるチェーン店さえ大量閉店に追い込まれています。その中で、生活資金不足で質屋に訪れる方は増えているのでしょうか?
残念ながら、決してそうではありません。むしろどのお店も、お客さんが大幅に減って苦しんでいます。
「どうして? お金がないからみんな借りたり、売ったりするんじゃないの?」
そのように言われることがよくありますが、たしかに、そのような方も少なくありません。しかしそれ以上に「プラスアルファのお金が欲しい」から質屋を利用する方が多く、そうしたお客さんの足が遠のいています。
現在は誰しも、生活を維持することで手一杯。遊びや外出にお金を使うことが少なくなっているそうです。給付金や手当などで、生活することはキープできている方が多いと聞きます。そのため「生活するお金が欲しくて、質屋を利用する」という人は少なくなってきました。

もし金銭的に余裕があっても店舗が休業していたり、時間短縮営業。旅行も控え、外出も減らす。遊べる場所も限られる。そうなるとお金があっても使い道がないため「遊ぶお金を作りたいから、一時的に質屋に借りよう」という層も減ります。お金回りが厳しくなると生活をまず重視するので、いろいろな欲も落ちます。 結果として、不況になると質屋は預かりの量が減ってしまうのです。
一方、買取はどうでしょうか?
品物を取り戻すのにお金がかかる質預かりと違い、売ったお金が完全に自分のものになる買取なら、生活を潤すためにも余裕を作るためにも増えそうに思えるかもしれません。しかし実際には、質預かりと同じく減っています。
質預かりを使用している方々は、もともと預かりから出して再び自分のものにしたいので、売る人は少ない傾向。そうでなくても断捨離ブームがとうに過ぎた現在、価値のある品物は処分が終わっている人も少なくありません。お店は閉店が続き、頻繁に買い物をする人も減ったので、そもそも売るものもない。遊ぶ場所もないし生活できているから、特に余剰なお金も必要なく、売る気もない……そういった方が増えて、アイテムの買取も減っています。買取があまり減っていないのはコロナ前より格段に相場が上がっている貴金属や、掛け率の高い金券など価格が安定したものが多いように感じます。

特に新型コロナウイルス感染者が爆発的に増加した初期に顕著でしたが、入国措置や輸出入が停止すると、海外のブランド品も入ってきません。工場自体が停止している企業もあります。家電なども海外で生産しているものが多いため増産できなくなり、または入ってこなくなって、結果として日本国内での物流が滞りました。そのため新品の流通も減り、品切れが続出。それらの相乗効果で、質屋や買取店への持ち込みも減ってしまっているのが現状です。

現在、お客さんが減って苦しんでいる業界は数多いと思います。特に飲食、次いで接客業も顕著で、アパレルの苦境などがニュースでよく採り上げられます。質屋や買取店も、同じく「接客業」です。そもそも訪れるお客さんが減っているのを、肌で痛切に感じる業種です。
どのお店も、よく言われる「コロナ前」から比較すると来客数が激減していると聞きます。貴金属やブランド品にこだわらず、多角的に取扱品を増やしている店舗はがんばっていますが、いわゆる昔からの質屋は廃業も視野に入れている店舗が少なくありません。それでも質屋は持ち家なので踏ん張れていますが、家賃や人件費などが発生する買取店は閉店が続いています。そんな状況でも質屋を訪れるお客さんから、冒頭の言葉をよく耳にするのは「質屋は苦しい時に助けてくれる」というイメージが定着してこそ。そう考えると嬉しいことですし、信頼感のありがたみを感じますね。何事も、苦しい時はお互い様。質屋があなたの苦境を、手助けできれば幸いです。



















